世界の中の日本文学に光を当てる――
文芸誌『jem』日本文学の海外受容・翻訳の状況を大特集した号を刊行したい!

水牛に奏でるみじかい音楽――『私のことのは散策記』

昼の言葉は鳥が聞き、夜の言葉は鼠が聞く(낮말은 새가 듣고 밤말은 쥐가 듣는다、韓国語)、おなかの中に蝶々がいる(Schmetterlinge im Bauch haben、ドイツ語)、小さくても小さくてもキダチトウガラシ(kecil kecil cabe rawit、インドネシア語)、水牛の近くで竪琴を弾く(チュエ・パー・サウ・ティー、ミャンマー)…みなさんはこうしたことわざや表現の意味をいくつ知っているでしょうか?

言語学に関心を寄せるものとして、未知のコトバを追い求めているものとして、「言葉についての発見」をテーマにした本や記事はわたしの読書史のなかで(いつも)とても大きな部分を占めています。

ZINE『tanec』1号(チェコ特集)のりさきゃん「チェコの慣用句で日本語を学ぶ」や(『jem』創刊号にも寄稿いただいた)阿部大樹さんの『翻訳目録』を読んで「くおーっ、おもしれーっ」と伸びあがりながらコドモのような歓声をあげたわたしとしては、いつかいろいろな方のちいさな発見を切手のようにあつめたコレクションをつくれないかと夢想していました。多くの方の手を借りてそれを実現できないか、という企画が今回のリターン特典のひとつ、電子ミニエッセイ集『私のことのは散策記』です。

プロジェクトページには、このように記しました。「執筆者はアレクサンドラ・プリマック(詩人、編集者)、荒木駿(春秋社編集部、〈アジア文芸ライブラリー〉ほか担当)、小笠原鳥類(詩人)、小原奈実(歌人)、ラナ・セイフ(翻訳家)ほか現在交渉中+リターンで寄稿権を購入くださった方3名」。

相談の結果、『jem』1号、2号の寄稿者である大島豊さん(翻訳家)、太田りべかさん(翻訳家)にも寄稿を快諾いただきました。大島豊さんはヒューゴー賞、ネビュラ賞はじめ数々の受賞作を含むアリエット・ド・ボダール『茶匠と探偵』、種村季弘も高く評価する『驚異の発明家の形見函』などの秀抜な翻訳でも知られますが、NHK-FMの「今日は1日ケルト音楽三昧」などにも出演する、アイリッシュ・ミュージックの紹介者でもあります。そして幸いなるかな、執筆者はまだ増える見込みです。また、高額帯のリターンとはなりますが、寄稿権にはまだあとふたつ枠が残っております。

以下、寄稿くださる方の略歴です(数回に分けてお知らせします)。

太田りべか(おおた・りべか)
翻訳家。インドネシア在住。訳書に “Kronik Burung Pegas”(村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』第1部〜第3部)、“Novelis Sebagai Panggilan Hidup”(村上春樹『職業としての小説家』)、“Segala Kekasih Tengah Malam”(川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』)、“Naomi: Cinta Si Tolol”(谷崎潤一郎『痴人の愛』)、エカ・クルニアワン『美は傷』(春秋社)など。

小笠原鳥類(おがさわら・ちょうるい)
岩手県生まれ。詩人。詩集『現代詩文庫 小笠原鳥類詩集』(2016)、『鳥類学フィールド・ノート』(2018)、『おお、限りなく懐かしい動物たち』(2025)、『感動のシャーロック・ホームズ』(2025)など。評論集『吉岡実を読め!』(2024)、『現代詩が好きだ』(2024)。

小原奈実(おばら・なみ)
一九九一年生まれ。歌人。東京大学本郷短歌会(現在は解散)、同人誌「穀物」などに参加。歌集に『声影記』(港の人)。

ラナ・セイフ(Rana Seif)
エジプト生まれ。翻訳家、通訳者。カイロ在住。毎日新聞中東支局にて9年以上にわたり通訳・翻訳を担当。アラビア語圏に日本文学を届けることをライフワークとする。主な文学作品の翻訳に今村夏子『むらさきのスカートの女』(2025)、八木詠美『空芯手帳』(2024)、漫画の翻訳に土屋ガロン・嶺岸信明『オールドボーイ』、 桜谷シュウ 『ニワトリファイター』、 清水栄一・下口智裕『ウルトラマン』など。

小笠原鳥類さんにおずおずとこの企画を相談したところ、わずか数時間で「書いてみました」とのメールのお返事が。「も、もう書いたの!?」と添付ファイルを開いて見たところ、タイトル(小笠原さんが選んだコトバ)は「電気ウナギ」。なんだかこれだけでもう感電してしまいました。ビ、ビ、ビ……。これ以上の内容は明かしません、まだ届いていない原稿もふくめ、きっとそれぞれに魅惑のビームを発散して面白いので、ウナギよりも長く鶴首してお待ちいただけると幸いです。引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

2025/07/28 00:44